第9回日本ラブストーリー大賞 1次選考あと一歩の作品(19)

『花人』/深山 ユウ 

 あらすじ&コメント

江戸・吉原を舞台に、入船というスーパー太夫の活躍を描いた時代小説。面白いエピソードをこれでもかとつぎ込んで読者を楽しませるサービス精神が頼もしい。しかし、吉原の時代設定には甘さが感じられるのが難点。遊女が刀使いだったり、大門を自由に出入りすることができるといった突飛な設定は、絶対的な禁止事項ではないが、一作品中、ひとネタくらいにおさえたほうがいい(「芭蕉が忍者だった」とか「沖田総司は女だった」という作品は、突飛な設定以外の部分は丁寧に時代考証しているものです)。ただし、作品の世界観を江戸・吉原とせず、どこかの国の古代の話と設定すれば問題ないので、そのように改稿してみてはいかがだろう。その際、もうひとつ気をつけてほしいのは、登場人物をあまり多くしないこと。2~3行で容姿と略歴を簡単に説明された登場人物が次々と出てくる場面が頻出すると、とても読みにくくなる。ひとりの人物を魅力的に描き出す工夫を身につけ、さらに上の傑作を狙ってほしい。

あと一歩の作品一覧に戻る

一次通過作品一覧に戻る